現在、オウンドメディアの企画・運営をしているのですが「0から1を創り出す」ということは、そう簡単なことではないと日々感じています。個人ブログもそうですが「メディア」を運営している方、これから始めようという方は、きっと同じような悩みがあると思います。
そこで今回は、私が「メディアの企画・運営」に関して調べものをしている中で、「0から1を創り出す」に関して、とてもおすすめできる本を発見しましたのでご紹介をさせていただきます。
簡単に要約を知りたいという方は記事をご覧ください。
目次
六本木未来大学の講義録
今回紹介する本は「クリエイティブディレクターを養成する学校が必要」ということで、WEBマガジン「六本木未来会議」の企画として2015年にスタートした「六本木未来大学」の講義録をまとめたものです。
「六本木未来会議って何?」という方のために簡単に説明をしておきます。
六本木未来会議
WEBマガジン「六本木未来会議」は、六本木の美術館やギャラリー、地域の方々と手を取り合い、街全体で六本木の新たな価値を見出すべく、2012年6月6日にスタートしました。幾多の才能が集結し、世界に通用するクリエイティブな都市。そんな六本木の新たな価値をつくるべく、私たちが注目したのは、現代を生きる様々な分野のクリエイターたち。「クリエイターの視点から考える未来」をコンセプトに、デザインやアートはもちろん、街やエンタメ、スポーツなどの切り口からちょっと先の未来のヒントを考えていきます。夜の街六本木から、クリエイティブな街六本木へ。新しい六本木をつくるために必要な、多様な発想やアイデアに耳を傾け、一緒になって、次の一歩をつくっていく場を。WEBマガジン六本木未来会議は、そんな想いの基、未来をつくる視点を、編集していきます。
参加しているクリエイターは100名以上。著名な方も多くおり、コンテンツの質はとても高いといえます。
六本木未来大学
六本木未来大学とは、単純にデザイナーではなく、経営視点を持ち、「ブランディング」から「プロモーション」まで、その会社を作るような働きをする「クリエイティブディレクター」を育成したいという想いから立ち上げられたものです。
年に数回「デザイナー」でけでなく、「編集者」「建築家」「コピーライター」「経営者」「プロデューサー」など様々な分野で第一線を走る方々が「クリエイティブ」について語る講義です。
0→1を生み出す発想の極意
では本編の注目ポイントを簡単にまとめていきます。
センスは知識にすぎない
六本木未来大学ができるきっかけにもなった「水野学」さんの章では、デザインの「センスというものは『知識』である」と語られています。
もともとデザインのセンスがあるわけではなくて、勉強をしたり経験をすることで知識を得てそれをデザインに反映できるようになっているのが「センス」ということです。
広告では、表面的な表現だけを考えていてはだめで、人々が何を求めているか、どう表現すると消費者に「ブランド・商品のイメージ」がより伝わるかを考える必要があるとのとこと。売りたいものの「らしさ」とはなにか、と消費者はどういうデザインにその「らしさ」を感じるのかを考えるとのこと。
色と書体を学ぶ
その中でもデザインのセンスを上げたいなら「色と書体」を学ぶべきとのこと。デザインがうまい人は、その知識とストックが豊富なだけ。色であれば12色の「色相環」。書体であれば、その書体の「歴史」を知ること。
例えば、海外のお寿司屋さんで変な書体を使っているのを見かけたことがあると思います。そういった時日本人の我々は違和感を抱きますが、英文の書体を使う際に、これと同じようなことをしてしまうことが多々あるとのこと。
書体にはそれぞれ物のイメージに合った使い方があるので、その成り立ちを知っておくことは非常に重要なのです。
この点は非常に興味深かったです。書体に歴史があることも意外でしたが、これはデザイナーでも知らない人(考えていない人)が多いとのこと。良いデザイナーとそうでないデザイナーはこういった部分の知識で見分けられるそうです。
伝えるより伝わることが大事
続いてはコピーライターの「小西利行」さん。ここで語られていたのは「伝える」というのは出し手側のエゴで、「伝わる」ことを考えるべきということです。
伝わることを考える際に重要なのは、「感情を動かすこと」とのことです。
具体的に言うと、放置自転車に困っているので何とかしたいという案件で、普通だと看板に「ここに自転車を置くな」と書くところを、「この自転車を自由にお使いください」や「不要自転車です」と書くと、放置自転車が減ったというようなことです。放置する人の立場に立って「何が嫌か」を考えるということですね。
アイデアを出しやすくすることが大切
もう1点参考になったのが、アイデアを出しやすい環境にすることも大切ということです。例えば、「責任はとるから自由にやって」というのは、一見かっこよく見えますがいいやり方ではありません。
「10万円の予算でできること」「3秒でわかる」など条件を付けて行う方が良い考えが浮かぶとのこと。これは個人的にも応用できることで、何かアイデアを考える際に漠然と考えるのではなくて、自分なりにルールを作って縛ってしまうことで逆に考えが洗練されるということです。
人が動くとはどういうことか
博報堂ケトルの「嶋浩一郎」さんの章。ここでは人を動かすためにどうしたらいいかということが語られています。
嶋さんは「インサイトに語り掛ける」ということを言っています。人が潜在的に求めていることに呼びかけるということです。
人は自分の欲求をほとんど言語化できていません。それが「書籍」や「テレビ」などによって呼び起こされて、「そういえばこれが欲しかった」と、考えてもなかったものを「前から欲しかったんだ」と人に思わせることになるのです。
さらに言うとこの行動を呼び起こすことは検索エンジンでは達成できません。検索はあくまでも顕在化した欲求だからです。
また、こういった「インサイト」は不満から生まれてくるとのこと。
嶋さんが立ち上げた「本屋大賞」もその一つで、出版で本屋さんを回っていた時に書店員さんが「何でこの本が選ばれたのだろう」と言っていた。ということは「他におすすめしたい本がある」のだろうと考えた結果、「書店員が選ぶ本屋大賞」が生まれたのです。
消費者は変化している
編集者の「菅付雅信」さんは世界と日本での編集の歴史を語ります。そして現代では。物は買わない。もしくは自分たちで作るもとなってきているといいます。特にシェアリングの傾向は強く、ルームシェア利用者の割合はロンドンでは68%、ニューヨークでも50%近くを占めているそう。しかし、東京では10%と日本は後れを取っているとのこと。※少し前の講義なので数値は最新ではありません。
大衆による生産の時代
後半では、大衆が生産側になることについても触れられています。
ブログもそうですが、個人で創作活動をするハードルはどんどん下がっています。アメリカでは、プロブロガーが体を張って何億も稼いでいるそうです。日本も少しずつそういった環境になってきている気がします。
さらに、章の最後に語られていた部分にも共感できました。「クリエイターはアマチュアが尻込みするような未知なる領域に飛び込み続けなくてはいけない」ということです。
アマチュアとの境がなくなり、AIとの競争にもさらされる中で、プロのクリエイターとして生き残るには、今までと同じことをしていてはいけない。そういった危機感も感じられる内容でした。
まとめ
ということで今回は「0→1を生み出す発想の極意」の要約をしてきました。
皆さんあらゆる立場から「クリエイティブ」についての考えを語っていますが、根本は似ていて、「相手の立場に立つこと」「知識を付けること」「観察をすること」などが重要だと語られています。
さらに言うと、特別な才能が必要なわけではないということです。こういった内容は私も含めて皆さんもどこかに活かせるのではないかと考えています。
また、その他にも、まだまだ気になる言葉、講義がありましたので少しでも気になった方にはぜひ全文を読んでいただきたいと思います。